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実質的支配者の特定と申告

法人口座開設の実質的支配者とは?判定基準と計算方法を解説

法人口座の開設で求められる「実質的支配者」とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な個人を指します。株式会社では、議決権の保有状況、支配的な影響力、代表者という順序で該当者を確認します。申込先の入力項目へ合わせ、株主名簿や資本関係図から判定根拠を説明でき。

先に結論

法人口座の開設で求められる「実質的支配者」とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な個人を指します。株式会社では、議決権の保有状況、支配的な影響力、代表者という順序で該当者を確認します。申込先の入力項目へ合わせ、株主名簿や資本関係図から判定根拠を説明できる状態にします。

この内容が役立つ方

法人口座の開設を予定している企業の代表者や、口座開設手続きを担当する経理・総務担当者

法人口座の開設で求められる「実質的支配者」とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能な個人を指します。株式会社では、議決権の保有状況、支配的な影響力、代表者という順序で該当者を確認します。申込先の入力項目へ合わせ、株主名簿や資本関係図から判定根拠を説明できる状態にします。

実質的支配者の申告が必要な理由

法人口座の開設において実質的支配者の申告が求められるのは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」に基づく本人確認義務があるためです。

銀行は、口座がマネーロンダリングやテロ資金供与などの犯罪に悪用されることを防ぐため、法人の背後にいる真の支配者を特定し、確認することが法律で義務付けられています。

実質的支配者の申告は、法人の背後にいる個人を確認するための重要な手続きです。申告内容と株主名簿・資本関係に差がある場合は、入力内容の確認や補足資料を求められることがあります。

会社形態別の実質的支配者の判定基準

実質的支配者の判定基準は、会社の形態(株式会社、合同会社など)によって異なります。

株式会社・特例有限会社の場合

株式会社や特例有限会社など、資本多数決の原則が適用される法人の場合、以下の順序で実質的支配者を判定します。

表は横にスワイプして続きを確認できます。

優先順位判定条件該当者
150%を超える議決権を直接または間接に保有する個人がいる場合その個人
250%を超える個人はいないが、25%を超える議決権を直接または間接に保有する個人がいる場合その個人(複数いる場合は全員)
3上記1、2に該当する個人がいない場合出資、融資、取引その他の関係を通じて法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる個人
4上記1〜3のいずれにも該当する個人がいない場合法人を代表し、その業務を執行する個人(代表取締役など)

合同会社・合名会社・合資会社の場合

合同会社など、資本多数決の原則が適用されない法人の場合、以下の順序で実質的支配者を判定します。

表は横にスワイプして続きを確認できます。

優先順位判定条件該当者
1法人の収益総額の50%を超える配当を受ける権利を有する個人、または出資総額の50%を超える出資をしている個人がいる場合その個人
2上記1に該当する個人はいないが、法人の収益総額の25%を超える配当を受ける権利を有する個人、または出資総額の25%を超える出資をしている個人がいる場合その個人(複数いる場合は全員)
3上記1、2に該当する個人がいない場合出資、融資、取引その他の関係を通じて法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる個人
4上記1〜3のいずれにも該当する個人がいない場合法人を代表し、その業務を執行する個人(代表社員など)

間接保有の計算方法

実質的支配者の判定において、議決権の保有割合は「直接保有」と「間接保有」を合算して計算します。

  • 直接保有: 個人が直接、対象法人の株式(議決権)を保有している場合。
  • 間接保有: 個人が「支配法人」を通じて、対象法人の株式(議決権)を保有している場合。

「支配法人」とは、個人がその法人の議決権の50%を超える議決権を保有している法人を指します。

計算例: 個人Aが、法人Bの株式を60%保有しているとします。この場合、法人Bは個人Aの「支配法人」となります。 さらに、法人Bが対象法人Cの株式を30%保有しているとします。 この場合、個人Aは対象法人Cの株式を間接的に30%保有しているとみなされます。 もし、個人Aが対象法人Cの株式を直接10%保有していた場合、直接保有(10%)と間接保有(30%)を合算し、個人Aの対象法人Cに対する議決権保有割合は40%となります。

実質的支配者が法人の場合の取り扱い

実質的支配者は、原則として「個人」でなければなりません。 しかし、国、地方公共団体、上場企業とその子会社などは、その性質上、個人と同等に扱われる特例があります。 対象法人の議決権の25%超を保有しているのが上場企業である場合、その上場企業自体を実質的支配者(個人とみなす)として申告します。上場企業のさらに背後にいる個人まで遡って特定する必要はありません。

仮想会社ケース:実質的支配者の特定

具体的な仮想会社ケースを用いて、実質的支配者の特定方法を確認します。

ケース1:親会社を持つ子会社(株式会社)

  • 対象法人: 株式会社X
  • 株主構成: 株式会社Yが100%保有
  • 株式会社Yの株主構成: 個人Aが60%、個人Bが40%保有

判定: 株式会社Yは個人Aの支配法人(50%超保有)です。 したがって、個人Aは株式会社Xの議決権を間接的に100%保有していることになります。 実質的支配者は個人Aとなります。

ケース2:複数の株主がいる合同会社

  • 対象法人: 合同会社Z
  • 出資構成: 個人Cが40%、個人Dが30%、個人Eが30%出資

判定: 50%を超える出資をしている個人はいません。 25%を超える出資をしている個人は、個人C、個人D、個人Eの3名です。 実質的支配者は個人C、個人D、個人Eの3名全員となります。

失敗例と回避策

実質的支配者の申告において、よくある失敗とその回避策を整理します。

失敗1:議決権割合の計算間違い

直接保有と間接保有の合算を忘れたり、支配法人の判定を誤ったりして、議決権割合を間違えるケースです。

回避策: 資本関係図を作成し、誰がどの法人を通じて何%の議決権を保有しているかを視覚的に整理します。特に、複数の法人を介している場合は、各段階での保有割合を正確に計算します。

失敗2:実質的支配者を法人として申告してしまう

実質的支配者は原則として「個人」であるにもかかわらず、親会社などの法人をそのまま申告してしまうケースです。

回避策: 上場企業などの特例に該当しない限り、法人の背後にいる個人まで遡って特定します。親会社の株主名簿などを確認し、最終的な個人を特定するまで遡及します。

実質的支配者の申告手順

法人口座開設時の実質的支配者の申告手順は以下の通りです。

  1. 株主名簿・定款の確認: 現在の株主構成や出資割合、議決権の定めを確認します。
  2. 議決権割合の計算: 直接保有と間接保有を合算し、各個人の議決権割合を計算します。
  3. 実質的支配者の特定: 会社形態別の判定基準に従い、実質的支配者となる個人を特定します。
  4. 申告情報の収集: 特定した実質的支配者の氏名、住所、生年月日などの情報を収集します。
  5. 銀行への申告: 口座開設申込フォームの所定欄に、収集した情報を入力します。

担当者: 代表取締役、または口座開設手続きの担当者 入力物: 実質的支配者の氏名、住所、生年月日、議決権割合など 完了条件: 銀行の申込フォームに正確な情報が入力され、送信が完了すること

実質的支配者リスト制度の活用

法務局が提供する「実質的支配者リスト制度」は、株式会社が実質的支配者情報を整理する方法の一つです。 この制度は、株式会社が法務局に実質的支配者の情報を申告し、法務局がその内容を確認した上で「実質的支配者リストの写し」を交付するものです。 この写しを実質的支配者の確認資料として受け付けるか、原本・発行時点・追加資料を指定するかは申込先により異なります。候補銀行の必要書類案内へ照合します。

読者が持ち帰るチェックリスト

申告前に、以下の項目を確認してください。

  • 会社の形態(株式会社、合同会社など)に応じた判定基準を理解しているか
  • 株主名簿や定款で、現在の議決権保有状況を正確に把握しているか
  • 直接保有だけでなく、間接保有も含めて議決権割合を計算しているか
  • 実質的支配者が原則として「個人」であることを理解し、法人を申告していないか(特例を除く)
  • 議決権の25%超を保有する個人がいる場合、その個人全員を漏れなく特定しているか
  • 申告する個人の氏名、住所、生年月日などの情報が正確か
  • 複雑な資本関係がある場合、資本関係図を作成して整理しているか
  • 申込先の銀行が指定する申告方法や必要書類を確認しているか

関連ガイド

補足:実質的支配者の変更手続き

口座開設後に実質的支配者が変わった場合は、利用中の銀行が変更申告を求めているか、提出方法と必要資料を確認します。 株式の譲渡や増資などにより、議決権の保有割合が変動し、実質的支配者が変わるケースがあります。 変更手続きを怠ると、銀行からの確認に応じられず、口座の利用が制限される可能性があります。 変更が生じた場合は、銀行のウェブサイトやカスタマーサポートで手続き方法を確認し、必要な書類を提出してください。